グラミン・ヴェオリア
背景
バングラデシュには地中のそれほど深くないところに開発しやすい大量の地下水資源があり、新鮮な水に豊富に恵まれています。1970年代から1980年代の間に約800万の井戸が掘られており、それによって人口のほぼ90%が水を手に入れることができます。しかし、基本的には地質学上の理由から、ほとんどの地下水は、健康に有害なレベルのヒ素に汚染されていることが判明しています。1990年代のはじめには、バングラデシュの病院が、ヒ素中毒の症例数が驚異的に増加していることを報告し始めました。今日では、3000万人以上のバングラデシュ人が慢性的なヒ素中毒の犠牲となっており、死者さえ出ています。
このような背景から、バングラデシュの最も貧しい地域の村人が清潔で安全な水を入手できるようにするために、グラミンとヴェオリア・ウォーターは協力し、お互いのスキルを補い合うことにしました。
ジョイントベンチャー
新会社はグラミン・ヴェオリア・ウォーター(Grameen-Veolia Water Ltd.)という名でバングラデシュで設立、登記されました。この会社はグラミン・ヘルスケア・サービス(健康と衛生のためのグラミンの子会社)とヴェオリア・ウォーターAMI(アフリカ、中東、インドのためのヴェオリア・ウォーターの子会社)による共同で同等に所有されており、事業はバングラデシュの中央部と南部で最も貧しい村々にいくつかの水の生産・処理施設を建設・運営することです。当事業は、全部で総額80万米ドルの投資がされ、5つの村で10万人が恩恵を受けると予測されています。
このプロジェクトの成功のために、ヴェオリアは専門的なノウハウや技術の移転を提供し、一方グラミンは農村バングラデシュでその地域の情報やネットワークを提供します。
グラミン・ヴェオリア・ウォーター株式会社は、折半出資のジョイントベンチャーで、ユヌス教授のソーシャルビジネス哲学に従って設立されています。
ソーシャルビジネス
ソーシャルビジネスの目的は、投資家に代わり会社が追求することができる社会的ゴールを持つことです。同時に、ソーシャルビジネスは自力で持続可能なものとなることを目指しており、他の普通の会社と同じように損失を回避しなければなりません。
会社の利益が蓄積された際には、投資額のみ投資家に還元されますが、投資額を超えた配当を還元されることはありません。利益は会社の拡大や人々を助けるためのサービスや商品を最良な価格で提供することで生まれる社会的利益のために再投資されます。つまり、ソーシャルビジネスとは損失なし・配当なしというモットーに基づき運営されながらも、人々を助ける商品やサービスを提供することを目的とした企業なのです。
全体の範囲
グラミン・ヴェオリア・ウォーターは、5つの異なる村でプロジェクトを展開していきます。それぞれのプロジェクトごとに、同社は飲料水の生産・流通施設に投資し、運営します。
すべての施設は地表水を処理することにより、WHOの基準に基づいた水を生産します。各村には、飲料水は専用のネットワークを通じ、給水塔を経由して分配されます。現段階では、各家庭への給水設備の接続は想定されていません。
水の主な用途は、飲料用や調理用になります。6人家族の場合、毎日の水の消費量は30リットル/日と見積もられています。
ソーシャルビジネスモデルに従って、飲料水は10リットル当たり1バングラデシュタカ(10リットル当たり1ユーロセント)で工場の門付近で販売されます。
最初のプロジェクト:Goalmariユニオン
最初のプロジェクトはGoalmariという、ダッカから東に50km離れた村で実行されます。
Goalmariの人口は約2万5千人です。地域の住民は地下水を飲料用や調理用に利用していますが、井戸の83%はヒ素(>10μg/ L)に汚染されています。地表水はヒ素に汚染されていないので、施設では河川水を使用し、パイプライン網を経由して村々の給水所に水を提供する予定です。最初にGoalmariの給水ネットワークは、川の湾曲している地帯(モンスーンによって高水位の影響を受ける)に住むGoalmariで最も貧しい住民の村落に到達する予定です。さらに遠くの孤立したエリアに水を提供するために、リキシャのような輸送手段も水の配給システムとして研究されています。
水はさらに、給水塔で顧客が水差しや壺を持ってきた時にグラミンレディらによって、1日のうち特定の回数、分配される予定です。これらの給水ポイントは村の主要な場所に設置されます。
また、水を配送してもらいたいと考えている人や高い可処分所得を持っている人々には、水タンクを装備されたオートリキシャによって少し高い値段で配送される予定です。
その他のプロジェクト
他の4つの村のプロジェクトは、Goalmariのプロジェクトの後、すみやかに実行されることになっています。
・2つ目の村(Paduaユニオン)のプロジェクトは2010年に活動開始が予定されています。
・3つ目と4つ目の村のプロジェクトは2011年、5つ目の村のプロジェクトは2012年に活動開始が予定されています。