2050年の世界
バングラデシュで始まった、マイクロファイナンスの貸し手でありコミュニティを育んでいく銀行であるグラミン銀行は、世界中の貧困を撲滅するために活動しています。 しかし、ノーベル賞の受賞者であるムハマド・ユヌス教授が、2050年までに実現したいと思っている目標は何でしょうか? 「貧困のない世界を創る」という著書の中で、ムハマド・ユヌス教授は、グローバリゼーションの究極の目標と考えていることについて述べています。
2050年までに現実化させたいと願っている世界を、以下にリストにしてお見せいたしましょう。 これらは私の夢です。ぜひ皆さんも2050年までにどんな世界になって欲しいか、想像しながらリストを作ってみてください。私もきっと皆さんの願いごとを気に入ることでしょう。その願い事をも私のリストに加えたいと思います。
私がのぞむ、2050年の世界
世界のどこにも、貧乏な人達も、物乞いも、ホームレスも、ストリートチルドレンもいません。どの国も、貧困が過去のものとなっています。世界貧困博物館は、最後に貧困から抜け出した国に構えられています。世界のどの国に行くにも、パスポートもビザもいりません。すべての人々が、真の意味での等しく国際社会の一員です。 戦争もなく、戦争に備えている事もなく 、戦争のための軍隊を設立することもありません。 核兵器や大量殺戮兵器も一切存在しません。
輝かしい未来
世界のどこにも、ガンからエイズといった様な不治の病は存在しません。 病気をしてもすぐに効果的な治療が受けれる様になり、 病気のままでいることが非常にまれなケースになっています。 質の高いヘルスケアを、全ての人が受ける事が出来ます。 幼い子供や母親が亡くなる事は、過去の出来事となっています。 誰もが世界のどこにいても、グローバルな教育システムにアクセスする事ができます。 すべての子供達が、楽しくワクワクする学びや成長を経験します。全ての子ども達が人々を思いやり、問題を解決する方法を考え分かち合えるような人に育って欲しいと思います。そして、子どもたちの成長は世界の発展だと信じています。
起業家精神の奨励
グローバル経済システムは個人、ビジネス、研究機関などの成功体験や成功をもたらした方法を他の人たちと共有することを奨励し、所得格差もなくしていくことでしょう。「失業」や「貧しい人々に対する施し」といった話題を耳にしなくなります。 ソーシャルビジネスが、ビジネスの世界でのかなりの割合を占める様になります。
世界の通貨は、たった一つとなり、硬貨と紙幣という通貨は、過去のものとなります。
銀行の未来
未来の銀行は、テクノロジーによって、政治家や役人、ビジネスマン、情報機関、地下組織やテロリストの、すべての秘密の銀行口座や取引内容を簡単に見つけたり、監視する事ができます。
あらゆる種類の最新金融サービスを、世界のだれもが利用できる様になります。
持続可能なライフスタイル
すべての人々が適切なテクノロジーに基づいた、持続可能なライフスタイルを維持するよう努力することが当然になっています。 太陽光、水力、風力が主なエネルギー源になっています。 人類は、地震や台風、津波やその他の災害を正確に予測する事ができ、被害や失われる命を最小限に食い止める事が出来るようになります。
すべての文化、民族、宗教が、人間社会という壮大な一つのオーケストラの一部として、それぞれが持つ美しさを存分に表現しています
人種、地域、性別、性的指向、政治的信念、言葉、文化やその他のいかなる要素をもっていても、差別される事がありません。
世界の通信手段
紙を必要としないため、木を伐採する必要がありません。 どうしても「紙」が必要な場合は、生分解性のある再生可能な合成紙を使います。
基本的な通信手段は、ワイヤレスで通信する事ができ、ほとんどコストがかかりません。
文化的なアイデンティティの保護
すべての人々が、自分の母語で、読んだり、聞いたりすることができます。 自分たちの言葉で話したり、読んだり、書いたりしても、 テクノロジーによって、受け取り側は自分たちの言葉に翻訳されたものを受け取る事が出来ます。誰かが話したりダウンロードされたどのような言葉の文章も、ソフトウェアと電子機器によって即座に自分たちの言葉に翻訳されます。 世界のどんなテレビ番組も、言葉も自分たちの言葉で見る事ができます。
すべての文化、民族、宗教が、人間社会という壮大な一つのオーケストラの一部として、それぞれが持つ美しさや創造性を存分に表現しています。
すべての人々が、果てしないイノベーションや、 再構築、コンセプトやアイデアを振り返る環境を楽しんでいます。
限りない人間の可能性
全ての人々は人間の可能性を追求し、平和と調和と友愛を共有しています。私たちがそれらに基づいて活動すれば、すべて実現可能です。 私たちが未来に向かっていくにつれ、夢を実現する事がどんどん容易になっていくと私は信じています。 難しいのは、今、決心してそれに臨むことです。私たちの 達成したいことに賛同する人が増えれば増えるほど、 実現するのも早くなっていきます。
夢の実現
私たちは、日々の仕事に忙しくなりがちです。 人生という旅路の中で自分が今どこにいるかを見つめる事を忘れてしまい、 最終的にどこに行こうとしているのか省みる時間を取ることを忘れ、生活を楽しんでしまします。いったん自分がどこに行きたいかを知れば、そこに行き着くのがより簡単になります。
私たちがこの世から旅経つ時にどんな世界であって欲しいか思いを馳せながら、 それぞれが自分だけの願い事リストを描くといいでしょう。 いったん願い事リストを作ったら、 私たちが目的地に近づいているかどうか日々思い出すため、願い事リストを家の壁にかけておくといいでしょう。
編集記:要点は、ムハマド・ユヌス教授の著書「貧困のない世界を創る」から採用。
著作権は、Public Affairsに帰属(2007年)し、出版社の許可を得て再版。